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最高裁判所第二小法廷 昭和60年(行ツ)77号 判決 1985年6月17日

兵庫県西宮市段上町六丁目六-二-一〇二

上告人

小谷弘春

同所同番号

上告人

小谷桂子

兵庫県西宮市江上町三番三五号

被上告人

西宮税務署長

横田光夫

右指定代理人

立花宣男

右当事者間の大阪高等裁判所昭和五九年(行コ)第三五号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和五九年一二月七日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件物件の譲渡につき租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの)三五条一項の規定の適用はなく、上告人らに対する本件各処分は憲法であるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう部分を含め、ひっきょう、独自の見解に立って原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 大橋進 裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判長裁判官木下忠良は、差し支えのため署名押印することができない。裁判官 大橋進)

(昭和六〇年(行ツ)第七七号 上告人 小谷弘春 外一名)

上告人らの上告理由

第一・二審判決は、上告人らの家族構成・並びに国の住宅政策・及び租税特別措置法の違法性を一切無視するものであり、被上告人がした所得税の更正処分は違法である。今回上告に際しては、第一・二審において、上告人らが主張している件に、回答を示されていない部分に関して、主に主張するので、判決内容に示されたい。

(違法条項)

憲法第二二条 居住・移転の自由

同 二五条 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利

同 一四条 法の下の平等(税の公平に関して)

(用語凡例)

A建物 第一審判決文 目録一記載の仁川フラッド一一二

B建物 同 右 目録二記載の本件物件

C建物 同 右 目録三記載の仁川フラッド一二二

租税特別措置法第三五条一項にて、居住用家屋を一に限定し、又これに面積規程を設けず、例外規程を設けていないのは、次の各理由により違法であり、かつ税の公平を租外するものである。

ちなみに上告人が生計を一にしている家族は8人(叔母死亡後は7人)であり、A・B・C各建物共・専有床面積は約五五m2であり、A+B又はA+Cとしても約一一〇m2である。

(1) 不動産登記法による家屋には面積規定はなく、どんな小さな家でも一戸の家屋として登記できるものであり、これを措置法にいう、一の家屋に適用している。この事は今回事件のA建物がいかに小さな家屋でも、この物件のみの売買にしか、措置法の適用を認め様としないものであり、不合理である。

(2) 国の住宅政策を見るに、不動産取得税の課税標準の特例・固定資産税の減額・住宅金融資基準・何れも一六五m2以下の住宅に優遇措置が購じられている。

昭和五六年三月の閣議決定による第四期住宅建築五ケ年計画によると、七人家族の場合、最低七六m2、半数の世帯が一一六m2の住宅規模とされている。上告人らが居住の用に供している家屋の床面積は、これら国策の床面積以下であり、その一部家屋の売買に税法上の特典を認めないのは、不合理・違法である。

(3) 同じ効果を生む行為であるが、B建物をC建物に買い換えた時、たまたまB建物の北隣が売りにでていた、A建物を売却し、そこに買い換える事もできた。この場合は措置法が適用されるが、逆の行為をしたために適用を認めないのは、税の公平に反するものである。

(4) 家族構成上、B建物又はC建物がないと、A建物の機能もそう失してしまうものであり、A建物自身に増築が不可能なため、B建物を購入し、これを増築部分として使用、この増築部分をC建物の部分に建て替えたと上告人らは判断している。この事を税法上認めないというのは、住宅公団等が進めている「二戸一改造」で居住面積を増やそうとしている国策に反するものである。

(5) 措置法の適用を受けたいのなら、A建物を売却して、他の地へ移転せよというのは、憲法二二条で保障されている、居住・移転の自由に反するものである。

(6) 措置法にいう「その居住の用に供している家屋を二以上有する場合」の二軒目以上の家屋とは何をさすか、二以上の遠融地に事業所等を有する事業主等の所有のもの、通勤の便等のために所有しているもの等が考えられ、今回事件の様に、生計を一にする家族に必要不可欠のものまで含めるのは違法である。

以上

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